6月末、母方のばあちゃんが、息を引き取った。享年85歳。

 

私が生まれてから、18で家を出るまで、実家で同居していた。

Uターンしてからは、実家に戻るたびに顔を合わせていた。

 

母と話をしながら夜遅くまで起きていると、

「まだ寝んのけ」と自室から声をかけられた。

帰省するたびに、

「さっちゃん!帰ってきたんか、ごはんちゃんと食べてるんけの」と、

新しい仕事を始めたと聞いてからは、

「お客さんいるんけ?大丈夫なんけ?」と

毎回ものすごく心配された。

少し前に結婚相手を紹介しに行ったときは、

「けんかせんと、仲良うしねの」と

ホッとしたような表情で声をかけてくれた。

 

ばあちゃんは、50年ほど前から、関節リウマチを患っていた。

手足の指や膝・肘が痛みを伴って変形していく病だ。

「あーいたたー」と言って顔を歪める表情をよく覚えている。

 

(ばあちゃんとわたし(2歳))

 

両親は昔自営業(寿司屋なので夜営業)をしていたので

幼少期に家で留守番している間、ばあちゃんに面倒をみてもらっていた。

ばあちゃんに手作りのワンピースを作ってもらったり、

夜にトイレについてきてもらったり

 (当時住んでいた家は廊下が長くて夜が超怖かった)

一緒におやつを食べたりした。

にぼしや、こんぶ。ふ菓子。

年寄りが好きそうなおやつである。

私もすきだった。

ばあちゃんのこともすきだった。

身体が不自由なばあちゃんの代わりに、

何かをしてあげるのが普通だった。

両親と外出して外食する流れになっても、

「留守番してるばあちゃんが寂しいやろで、

 家でごはん食べよう」と言っていたくらい。

(だから、上京するまで、外食も旅行もテーマパークも、

ほとんど行ったことがなかった。)

 

あるとき友達の家にいって、

そのおばあさんがしゃんとして歩いているのを見て、

 びっくりしたものである。

 「ばあちゃん」という存在は、身体が不自由なのが普通だと思っていた。

友達がうちのばあちゃんをみて「かわいそうや」と言ったのを聞いて、

初めてばあちゃんが少し他の人と違う、身体障害者だと気付いたのだった。

ただし不自由さが「かわいそう」とは思わなかったけれど。

ばあちゃんは、ばあちゃんだった。

 

母はそんな実の母であるばあちゃんを、

リウマチが発症してから50年近く、介助・介護し続けた。

 

実母と実娘。

二人はお互いに遠慮がなく、

はたから見ていてハラハラするほど衝突することもあった。

身体が思い通りにならない分、母を思い通りに動かしたいばあちゃんと、

それをある意味「監視」されているように感じてしまう母。

社会人になってようやく、

その二人の気持ちが想像できるようになった。

 

ばあちゃんはほとんど外出することなく(自力では外出できない)、

家の中でその人生後半のほとんどを過ごした。

母も、それに伴って、ほとんど外の世界を知らずに生きてきた。

 

私は、そんな家族をみて、思春期になった頃には

「自分が力になろう」と思うよりも強く、

「この狭い世界から逃げ出したい」と思うようになっていた。

 

心の中は複雑だった。

 

でも、今思えば、両親が自営業であったことや、

母がばあちゃんに掛かりきりで、手一杯だったことで、

「自分のことは自分で考えて進めてください」状態だった。

これで自由に自分の道を歩めたような気がする。

 

もっと色々「やってもらって」いたら、

違う道だったかもしれない、と今でも思う。

 

それでも家族は、学費、寝床、食事を用意してくれた。

(寝坊したときの学校までの送り迎えも)

 

母は「あんたは本当に苦労する道を行くのが好きなんやの」と言いながら、

口を出したいのを我慢して、 見守ってくれていた。

(あるいは口を挟む暇もなかったのか)

 

ある意味ばあちゃんがいてくれたから、

とても恵まれた環境だったのかもしれない。

 

**********

 

ばあちゃんは、この4月に、調子が悪いといって入院した。

色々あって入院は伸びて5月末まで病院にいた。

それから退院して在宅介護に戻ったものの、熱が下がらず、2週間で再入院。

ある日の深夜に容体が急変、

集まった親戚みんなの顔を認識するほど一旦は意識が戻った。

でも翌晩には再度意識がない状態になり、

さらに翌日の午前中には息を引き取った。

 

危ない、となってからはあっという間だった。

母とも話していた。

「ピンピンコロリの部類に入る逝き方やの」と。

リウマチを患っていた時間はとても長かったけれど。

 

意識のない病床のばあちゃんの手を握って、頭を撫でているうちに

呼吸が止まって心肺停止の状態になった。

見た目に痛みや苦しみは感じられない、安らかな臨終だった。

 

直接この瞬間に立会ったからか、

今までのお葬式では亡骸に対峙することがとても怖かったのに、

今回はまったく「怖れ」という感情がなかった。

 

何度も白布を取って顔を眺めていられた。

ほとんど外出できなかったせいでシミひとつない真っ白い肌。

生前、痛みに顔を歪めてできた深い眉間の皺も、

重力ですっかり伸びてきれいになっていた。

病院で、少しおしろいを塗って、頬紅をつけてもらったばあちゃんの顔は、

母と「こんなかわいらしい顔してたんやの(笑)」と話すほど、

今にも目を覚ましそうで、なんだかおかしかった。

 

ばあちゃんは85歳。生を全うした。

 

親族が集まって話すことといえば「次はうら(福井弁で「わたし」の意味)や」。

近くに住んでいたばあちゃんの姉妹はもちろん、

離れて暮らしているばあちゃんの兄弟も久しぶりに福井に参集し、

笑い声が響くにぎやかなお通夜だった。

 

悲しいけれど、寂しいけれど、

直前にはばあちゃんに結婚の報告もできたし、

このタイミングで親戚一同とも会うことができたし、

なんだか良かったなぁ、と思える

そんなばあちゃんの去り際だった。

 

***********

 

今回わかったこと。

 

その人がどんな人だったか、この世からいなくなったときによくわかるということ。

冠婚葬祭によって、よくも悪くも家族のつながりを再認識するということ。

儀礼(振る舞いのルールなども含めて)は、心の準備をする上で

とても意味のあるものだということ。

 

特にばあちゃんのいとこ、”みっちゃん”(82歳)が、

一度廃れてしまった無形文化財の”石田縞織り”(鯖江で明治期に勃興した織物)の

復活の功労者、吉川道江さんであることを知れたことは大きかった。

「遅咲きの梅」という小説のモデルにもなっている。

 

これはばあちゃんの最大の置き土産だったと思っている。

 

みっちゃんは年齢的にはお年寄りだけど、

とにかく話が通じる(議論ができる)お年寄りだと昔から思っていた。

そしたらそんな人だった。だれも教えてくれなかった。

そういうことこそ教えてほしい。

 

みっちゃんは今、定時制高校に通っている。

多分県内最高齢JKである。そんなおばあちゃん、最高だ。

手織りセンター見学を携帯電話でチャチャッと予約してくれ、

当の本人は「英語のテスト勉強があるから、行けんのや、ごめんの」。

こないだ、数学のテストでは1番をとったらしい。

しかも今自叙伝を書いていてこれから出版するそうだ。

パワフルすぎて最高だ。自叙伝、読むしか。

 

***********

 

葬儀で集まった高齢の親族を見ながら、

順当にいけば、この目の前にいるみんなを

わたしはこれから見送っていくのだ、

送る命もあれば迎える命もあって

わたしもいつかは見送られる立場になるのであって

大きな円環の中にわたしたちは生きているんだと

じんわり身に沁みて感じていた。

 

***********

 

ばあちゃん、お葬式が終わってから、2回ほど夢に出てきたけれど、

それからはまったく出てこないなぁ。

わたしが楽しそうに暮らしているのみて、安心してくれたんかな。

 

あの世で元気にしてるんやろか。

リウマチから自由になった手足を思い切り動かせてるやろか。

まだ三途の川、渡ってるとこやろか。

 

わたしは元気でやってるよ。

 

そのときがいつ来るか、わたしにはまだわからないけれど、

そのときまで、とにかく楽しく、生きよう。

 

sakiko:)

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